ちょい旅 湯西川温泉

2023年正月。2日から一泊二日で栃木県北部の秘湯、湯西川温泉を訪ねました。

ここは、以前から気になっていたところ。というのも、10年ほど前から会津方面にスキーに行く途中、トンネルの中に湯西川温泉駅があって、そのトンネルの中の駅で多くの人が乗り降りするのです。地上の様子がわからない地中で人が乗り降りするという不思議な記憶が、湯西川温泉への興味の始まりです

人づてに、そこは、秘湯であるとか、平家落人の集落であるとか聞くに及び、俗世離れした謎の地をいつかは見てみたいとの気持ちが募っていたのです

今回は、鉄道ではなく、車で向かうことにしました。現地では雪が積もっているようなので雪道対策を考えなければなりません。雪道対策は、スタッドレスタイヤかチェーンの二択ですが、手軽さとコストを考え、今回はチェーンを使うことにしました。

チェーンは文字通り本来は金属製のチェーンをタイヤに巻き付けるものなのですが、ネットで調べると、最近はチェーンにも色々なタイプがあるようで、ゴムのネットのようなもの、繊維をタイヤに巻き付けるものなど、装着しやすさ、効き目などの付加価値をうたったチェーン以外のチェーンがたくさん紹介されています。でもそこは欲張らず廉価で尚且つ、よく効くものをチョイス、亀甲型の金属製チェーンを買うことにしました。

次に、近所のオートバックスに在庫状況を聞くと、在庫ありとのこと、値段を聞くと15000円程でした。念のためにネットで検索すると、亀甲型のの金属製チェーンは4600円。迷わず、Amazonで購入。タイヤサイズとチェーンの適合についてはメーカーの適合表を確認。これで、足は確保できました。

行きは、東北自動車道を通り、佐野サービスエリアで昼食、13時を回っていたのでピークは過ぎているかなと思い遅めの昼食をとるべくSAの建屋に入ると行列ができています。20分ほど並んで、やはりここは佐野ラーメンかなと思い佐野ラーメンを食べました。初めての佐野ラーメン、あっさりとしたスープに縮れた平らな麺、太くてかみごたえのあるシナチク、厚めのチャーシュー830円也。とてもおいしかったです。

それからも渋滞らしい渋滞は無く、佐野ラーメンの券売機に並ぶのが唯一の渋滞でした

ナビに案内されるまま、鬼怒川温泉郷の裏側のバイパスを通り登っていくと、前面に雪が付いている対向車と何台かすれ違う。ちらほらと雪も舞い始め、ヒヤヒヤしながら車を走らせる。急遽、チェーン装着所というスペースに車を停め、チェーンを装着。5分程度で装着して再出発。チェーンを付けているのであまりスピードを上げずに40kmほどで走る。段々と雪が激しく降ってきて恐々と運転すること小一時間、いくつものトンネルを抜け湯西川に到着した頃にはすっかり雪景色。完全なる雪国に来てしまいました。

温泉街に入ってすぐのところにある「白雲の宿山城屋」が、今回泊まる宿になります。正面から見ると鉄筋コンクリート4階建の建物、築年数は40年位に見えます。

白雲の宿山代屋

ロビーに入って正面は、川を挟んで向こう側の山肌が目に飛び込んでくる。山の斜面の樹木の枝には雪が積もり、ほんの4時間前に東京にいたことが不思議に感じられます。ロビーがある階は3階となっていて、浴室と宴会場が入り口のある階より下にあることから、渓谷に向かって建てられていることがわかります。

年配の男性によるチェックインを済まし、ベトナム人らしき若い女性に案内され部屋に入りました。チェックインをしてから部屋に案内してくれるスタッフを中居さんと言うが、以前であれば、日本人の女性が担っていた役割だったと思うが、近年は

部屋の空気は、強力な暖房が効いており暖かかった。部屋の窓からも川を挟んだ向かいの山が間近にあります。縁側の椅子に座ると、渓谷越しに隣の宿が見え、自然の中にある人里の温もりを感じます。

夕食の前に、温泉街をぶらりと歩くと元日の2日だというのに酒屋が空いていました。しんしんと雪が降る中に店の光が通りを照らす様子は、照明の色が赤っぽいせいか温かく見えます。

湯西川マップ
湯西川温泉の地図

地元のどぶろくを買って部屋に戻り、浴場へ。

浴場には、自分達以外誰も居らず広い浴場を独り占め、施設全体が古いせいか、ところどころタイルが剥がれていたり、配管が剥き出しだったりします。しかし、これも奥深い秘湯の小道具であると思えば納得です。

さて、待望の露天風呂、ドアを開けると下へ降る石段。その向こうを見ると、秘湯感たっぷりの湯殿が待っていました。

秘湯感たっぷりの露天風呂
川面を見ながらの露天風呂

体も温まり、次の楽しみは夕食、ここ湯西川の宿では、囲炉裏で夕食を食べるスタイルが多いようで、今回泊った

囲炉裏を囲んだ食事
囲炉裏での食事は貴重な体験

朝食はバイキング形式となっている。正月だったので、栗きんとんや昆布巻きなどのおせち料理があったが、大体は、田舎の感じの料理がメインである。秘湯のイメージにはあっていると思う。

ホテルや旅館の窓側にある用途不明の空間ありますよね。二人で向かい合うように椅子と小さなテーブル、外部に着いた窓と畳の部屋側の障子に挟まれた空間。

この空間なんて呼ぶのでしょうか? 外部と内部の間にあるバッファー空間ではあるのですが、日本建築的な名称を付けるにしても、床面には安っぽいじゅうたんが敷いてあるので、縁側という言葉が適当とも思えない。あるサイトに「広縁」と紹介されていますが、はたして真偽のほどは別としてとりあえず広縁としておきましょう。

広縁とな?

さて、ここの広縁、窓側にあるためか、すこぶる寒い。雪のない季節であれば丁度良いのかもしれないが、どうも、外壁は厚さや堅さから推測するに断熱材も入っていないようである。それに加え、サッシはアルミサッシは結露し、ガラス部分はシングルガラスのため激しく結露を起こし、もはや純粋製造装置と化している。床の外壁付近は当然結露を起こししっとり濡れている。いくら平家落人の隠れ家とはいえ、鉄筋コンクリート製の建物を作る職人までが、落ちぶれた人間だったとは思えない。設計者の無知、施工管理者の怠慢であろう。

因みに気密性が高いはずのアルミサッシは枠と商事部に1cmほどの隙間があるから驚いた。

窓枠に隙間。換気用か?

平家の落人の村

翌日は、少し観光めいたものをしようかと、ホテルのすぐ近くの平家落人民俗資料館を訪れた。驚いたが、全くの民間の資料館であり、受付の小窓の奥には家の居間であり、ここで暮らしている老婆が一人で入場者を管理している。入館料500円也を支払い中に入ると、写真撮影禁止となっている。

展示物は、脈略もなく様々なものが展示されている。当時の刀や鎧など平家の落人が使っていたらしい武具や馬に乗る際の鐙、平のなんだかが「使っていたと言われる」木製の硯等、どれも学術的な検証は定かではなく、真偽の程は皆目見当もつかない。

さらに、古い農具やスズメバチの巣など平家とは全く関係のないものも展示されている。近所の人から集めた珍しいものをなんでも展示しているという趣である。多少秘宝館の雰囲気を感じるような資料館であった。

この地域の独自の風習として、こいのぼりを揚げない、焚火をしない、犬や鶏など鳴き声を上げる動物を飼わないなど、外部に自分たちの存在を知られないことなどがある。

平家の名を借りた秘宝館と思えばよいか

今回は、これで帰ろうと思い、隠れ家的温泉街から出ようと車で雪道を走り始めたが、なんだかやり残した感があり、もう一度平家の隠れ家的雰囲気に触れたくて、車をUターン。少し走ると。発見!

平家集落とあるではないか!こんなところに平家の集落があるとは、是非見ておかなければと思い。脇道に入り車を止めて、探索を開始した。

川が流れる谷のくぼ地に家が何件か建っている。勾配の急な寄棟の大きな屋根がいくつか見える。車を停めて、雪道を歩くと家と家の間の隙間に人が一人通れるくらいの道がある。雪が踏み固められているということは、人の流れがあるということ、臆せず進む。

この辺りでは最格上のような本家伴久
金井旅館 勇気ある露天風呂
金井旅館

平家集落を見下ろす小高いところにある慈光寺。壇ノ浦の戦いに敗れ、僻地に隠遁した平家落人の菩提寺として知られる寺とのこと

江戸のサービスエリア

東北自動車道を東京に向かう途中。羽生パーキングエリアに寄る。このパーキングエリアは池波正太郎の鬼平犯科帳とコラボをしてつくられた江戸風情を再現したテーマパークのような施設になっている。

次男が頼んだのは五鉄の「一本うどん」という食べ物。ここの店を始める際に試行錯誤して開発した名物だそう。記念に写真を撮ってやろうと思い、次男に箸で持ち上げるよう伝え、少しづつ持ち上げ、「もう少し持ち上げて」と、言って一番持ち上げた時に、箸からうどんが滑り落ちた。今までで一番飛び跳ねたうどんを目の前にして、しばらくは、テーブルを拭く作業が続いた。

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