避難所が、決して安全ではないことを、コロナウィルスの被害から考えてみたいと思います。災害時に、多くの人たちが体育館などに集まり、床に寝泊まりすることは、
- 狭い空間で話をしたり、くしゃみをすることで起こる飛沫感染。
- 床に座って過ごすことによって、床に落ちた菌やウィルスを吸い込みやすくなることによる感染。
- トイレのドアノブ、水栓などを大勢の人が触れることで起こる接触感染
- 夏であれば、密閉空間でエアコンによる空気の対流から起こるエアロゾル感染
- 冬であれば、やはり寒さのため換気を少なくするためにおこる空気感染
など、あらゆる感染の見本市のような状況が、起こることが想像されます。
群発する地震、迫りくる火災、暴風雨による水害から逃れ、命を守るために避難所に避難しますが、こういった行動は、決して望ましい避難行動ではありません。
災害が起こってからできることには限界があることは。人間の健康について想像してみるとわかりやすいでしょう。
普段から、大酒を飲み、たばこを吸い、暴飲暴食、運動不足などの不摂生な生活をしていれば、いつかは脳梗塞、心疾患、糖尿病などの生活習慣棒にかかります。そうなってから、病院に駆け込んでも手遅れなのです。健康を維持するためには病気になる前から予防する他ありません。対処療法ではなく予防医学が必要なのです。
災害に対しての予防医学は、耐震性があり、火災に強く、水害でも垂直避難ができるシェルターを用意することです。シェルターを用意するといっても、特別なものをつくるというわけではありません。
普段の住環境をシェルターとして整備しておくのです。住んでいるところ、働いているところに籠城することで、安全な避難が可能になるのです。
- 耐震性については、新耐震基準以上の構造
- 火災に対しては、準耐火構造以上になるよう建材を使う
- 水害に対しては、ハザードマップの浸水高さ以上の階を設ける
という対応で可能だと思います。耐震性、耐火性については、建築基準法でも定められているので新築の建物では問題ないと思いますが、水害に対しては、法律で決められているわけではありません。
法律で決められていないから対策をしなくて良いということでは、暴飲暴食で平気な顔をして生きているのと同じです。自分だけではなく大切な家族の命を守るためには、法律で定められていることだけではダメなのです。
こういったことは非常に大切なことなのですが誰も教えてはくれません。東日本大震災の時も、原発がメルトダウンしたのは、水が原因でした。津波が、どの高さまで来るのかという簡単な備えについて、国や電力会社、大学の偉い先生方が、何もできなかったことを目の当たりにしたのは記憶に新しいと思います。
大切な家族の命を守るためには、考えられる災害に対して、あらかじめ備えておくという発想が必要なのではないでしょうか。
かなや設計 環境建築家 金谷直政