東京の下町のレジリエント

東京の典型的な下町墨田区京島地区。ここは、東京の最先端のシンボルである東京スカイツリーの足元と言っていいほどの近くにあります。世界的な大都市の象徴であるスカイツリーの近くでありながら、災害時の危険度は非常に高い地域です。

例えば、東京都の地域危険度測定調査によれば、都内の市街化区域5,177町丁目について危険度の判定を行っていますが、

「建物倒壊危険度(建物倒壊の危険性)」は、京島2丁目が1位、京島3丁目が2位、スカイツリー側の押上3丁目が34位、

「火災危険度」は、京島2丁目が2位、京島3丁目が9位、スカイツリー側の押上3丁目が8位といづれも不名誉な高順位となっています。

つまり、これらのことから考えられることは、地震が来た際には、建物が壊れやすく、更に燃えやすいという非常に危険な地域であることが、わかっています。

さらに、墨田区水害ハザードマップ「荒川が氾濫した場合の浸水想定区域図(最大想定規模)」を見ると、京島2丁目、京島3丁目、押上3丁目の浸水深さは3m以上5m未満で、2週間以上浸水が継続(0.5m以上)することになっています。

墨田区水害ハザードマップ

こういった情報が、ここに住む住人に知らされ、地域活動に関わる町会役員、防災士は、避難所運営に備え、地域の小学校での避難所訓練、避難所運営ゲームHUG(ハグ)などの活動を毎年継続しています。

これらの活動は、水害なのか、火災なのか、震災なのか、災害を特定するものではなく、様々な災害に対して避難所を開設して運営するイメージをゲーム感覚でシミュレーションするものです。

しかし、今、コロナウィルスという、想定外の災害が、新たに表れました。これは、いままでの災害とは違い、人間を内部から破壊するウィルスによる疾病的な災害であり、静かではあるが、ジワジワと私たちの健康を阻害し、高齢者を中心とした弱者の命を奪うものです。

この災害がいままでの災害と一番違うのは、避難という安全地帯が無いことです。今までと同様に、ひとところに集まって助け合って過ごすこと自体が、感染を引き起こし被害を広げてしまうのです。

このような疾病的な災害に直面して、私たちは、今までの災害対策を考え直さなければならないかもしれません。それは、耐震性があり、耐火性があり、十分な高さのあるシェルターに避難してもウィルスの該からは逃れられないことを認識するべきです。

これからの災害対策は、ひとところに集まるのではなく、それぞれの普段の生活スペースのなかで籠城するという考えが必要になるのではないかと思います。

籠城とは、外的に対して、強固な城郭を築き外敵が去るまで、城郭の中で耐えるということです。

2020.6.8

かなや設計 環境建築家 金谷直政

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